IT資産管理台帳はAIで自作するか、テンプレートを使うか:選び方と、作ったあとの確かめ方
結論:表を作ること自体より、作ったあとに確かめて引き継げるかで選ぶ
生成AIに頼めば、IT資産管理台帳の表や数式は作れます。そのため「どちらが作れるか」ではなく、次の3つを誰がやるかで選ぶのが現実的です。
- 数式が正しく動いているかを確かめる
- つまずいたときに直す
- 担当者が代わるときに、使い方を引き継ぐ
台帳に何を書くか(機器・ライセンス・割当の3つの表と項目)は、IT資産管理台帳の作り方で説明しています。この記事では、自作とテンプレートの選び方と、作ったあとの確かめ方を扱います。
自作が向いている人・テンプレートが向いている人
| 自作が向いている | テンプレートが向いている | |
|---|---|---|
| 数式 | 読んで直せる | 読むのは苦手、または時間がない |
| 管理する項目 | 自社独自の項目が多い | 一般的な項目で足りる |
| 作ったあとの手間 | 確かめる・直す時間を取れる | 確かめる・直す時間を減らしたい |
| 引き継ぎ | 使い方の説明も自分で書ける | 説明が最初から付いているほうがよい |
数式を読んで直せて、確かめる時間も取れる人は、自作するのがいちばん自社に合った台帳になります。
AIで自作する場合の頼み方
最初に守ること:実データをAIに貼らない
使用者の名前・部署・シリアル番号などの実データは、AIに貼り付けないでください。AIに渡すのは、列の見出しと、作り物のデータ(ダミーデータ)だけにします。使ってよいAIサービスや入力してよい情報について社内のルールがある場合は、そちらに従ってください。
頼み方の例
表の構成・判定のルール・使う環境を具体的に書くと、意図と違う数式が返ってくることが減ります。
Googleスプレッドシートで、IT資産管理台帳を作りたいです。
次の3つのシートに分けてください。
1. ハードウェア台帳:管理番号、種別、保証期限、保証の状態、使用者、ステータス
2. ライセンス台帳:ライセンスID、製品名、保有数、割当数、残数
3. ライセンス割当:ライセンスID、使用者、割当日、解除日
自動計算のルール:
- 保証の状態:保証期限が今日より前なら「期限切れ」、今日から90日以内なら「期限間近」。
保証期限が空欄の行と、ステータスが「廃棄済」の行は空欄。日付でない値は「日付エラー」。
- 割当数:ライセンス割当のうち、割当日が今日以前で、解除日が空欄または今日より後の行の件数。
- 残数:保有数 − 割当数。
条件:
- Excelでも動くように、ARRAYFORMULA と FILTER は使わず、1行ずつ数式を入れてください。
- 範囲は $A$2:$A$1000 のように終わりの行まで書いてください。
- 各数式が何をしているかを、日本語で説明してください。
Excelでも使う可能性がある場合は、上の「条件」のように書いておきます。Excelでは「A2:A」のような終わりの行のない範囲は使えず、FILTER関数は古いバージョンのExcelにはありません。
作ったあとに確かめる方法
AIが返した数式は、それらしく見えても、境目の値で判定がずれていることがあります。次の手順で確かめます。
1. 「今日」を固定した日付に置き換える
TODAY() は毎日変わるため、確かめた結果を見比べられません。確かめる間だけ、どこかのセルに「2026/10/01」のような固定の日付を入れ、数式の TODAY() をそのセルの参照に置き換えます。確かめ終わったら元に戻します。
2. 境目の値を入れて、期待する結果と比べる
基準日を 2026/10/01 とした場合のテスト用データと、期待する結果の例です。
保証の状態
| 保証期限 | ステータス | 期待する結果 | 確かめたいこと |
|---|---|---|---|
| 2026/09/30 | 使用中 | 期限切れ | 前日は期限切れ |
| 2026/10/01 | 使用中 | 期限間近 | 当日はまだ期限切れではない |
| 2026/12/30 | 使用中 | 期限間近 | 90日後は含む |
| 2026/12/31 | 使用中 | (空欄) | 91日後は含まない |
| 2026/04/01 | 廃棄済 | (空欄) | 廃棄済は警告しない |
| 来年3月(文字) | 使用中 | 日付エラー | 文字は日付として扱わない |
| (空欄) | 使用中 | (空欄) | 未入力は警告しない |
ライセンスの割当数(保有数を3とする)
| 割当日 | 解除日 | 数えるか | 確かめたいこと |
|---|---|---|---|
| 2026/09/01 | (空欄) | 数える | 割当中 |
| 2026/10/15 | (空欄) | 数えない | まだ始まっていない |
| 2026/04/01 | 2026/10/01 | 数えない | 当日に解除した |
| 2026/04/01 | 2026/10/02 | 数える | 解除は明日 |
| (空欄) | (空欄) | 数えない | 割当日がない |
この5行がすべて同じライセンスIDなら、期待する結果は 割当数2、残数1 です。
3. 見落としやすい点を確かめる
- 「*」や「?」を含む値:COUNTIF・COUNTIFS は、検索する値に含まれる「*」「?」をワイルドカードとして扱います。たとえば管理番号の重複を COUNTIF で調べていると、「PC-*」という値の行は「PC-」で始まるほかの管理番号まで数えてしまい、重複がないのに重複と判定されることがあります。IDに記号を使わないか、ワイルドカードを打ち消す書き方にします。
- 文字として入った日付:CSVから貼り付けた日付や、先頭に「'」が付いた日付は、見た目が日付でも文字として扱われ、比較の数式が意図どおりに動かないことがあります。上の「日付エラー」の判定があれば気づけます。
- 列の追加・並べ替え:列を挿入したり並べ替えたりしたあと、数式の参照先が正しい列を指しているかを確かめます。
4. 使い方と確かめ方を書き残す
自作した台帳を引き継ぐときに必要になるのは、表そのものより、次のような説明です。
- 各列の意味と入力のルール
- 自動計算の列と、その判定のルール
- 上のようなテスト用データと期待する結果(あとで数式を直したときに、同じ確かめ方ができるように)
これを書き残す時間が取れるかどうかも、自作するかを決める材料になります。
テンプレートを使う場合も確かめること
テンプレートを使う場合も、次の点は使う前に確かめてください。
- 自社で使う環境(Googleスプレッドシート/Excel、Excelのバージョン)で動くか
- どんな確かめ方をしてから配布されているか
- 自動計算の列と、入力してはいけない列がどこか
- 列を追加したいときのルール
社内IT道具箱の「IT資産管理台帳」について
社内IT道具箱では、保証期限の前日・当日・90日後・91日後、未来の割当、当日の解除といった境目の値を含むサンプルデータと、あらかじめ用意した期待値を照合する自動の検証を行い、そのうえで無料版を配布する準備をしています(配布準備中)。確かめた項目の一覧は、公開時に紹介ページで示す予定です。
有料版(準備中)では、期限のメール通知や棚卸しの記録に加えて、担当者交代の手順書と、AIで安全に改造するためのガイドを付ける予定です。
まとめ
- 台帳の表はAIでも作れる。選ぶ基準は、確かめる・直す・引き継ぐ手間を誰が持つか
- AIには実データを貼らず、見出しとダミーデータだけを渡す
- 「今日」を固定し、境目の値と期待する結果を用意して確かめる
- 確かめ方も書き残しておくと、引き継ぎや修正のときに使える
この記事の内容は一般的な参考例であり、法的助言ではありません。導入にあたっては自社の状況に合わせて内容を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。数式による判定は入力されたデータにもとづく参考情報です。保証期限や契約内容は、メーカーや契約先の情報で確かめてください。